賃貸でもできる家具固定-壁に穴を開けない転倒防止の方法【公的データで比較】

背の高い木製のタンスの上に立てた2本の突っ張り棒。天井との間で突っ張って固定している わが家の備え

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「賃貸だから、家具は固定できない」

そう思って、後回しにしていませんか。

小さい子どもがいる家庭ほど、この問題は深刻です。子どもは体が小さく、倒れてきた家具の下から自力で抜け出せません。大人なら手で支えられる重さでも、子どもには逃げ場がない。それでも「賃貸だから」で止まってしまう家庭が多いのが現実です。

実は、それは思い込みです。壁に穴を開けなくても、家具は固定できます。 しかも、その効果は公的な実験で確認されています。

地震の危険は、建物の倒壊だけではありません。建物が無事でも、倒れてきた家具で家族がけがをする。これは、実際の被災地で数多く起きてきたことです。

この記事では、賃貸で家具を固定する方法を、公的なデータと合わせて解説します。

「突っ張り棒って意味ないんじゃない?」「大家さんの許可は要る?」「100均でいいの?」。こうした、よく聞かれる疑問にも先回りで答えました。特別な工具は要りません。買うものも数千円です。


賃貸だからこそ、家具固定が必要な理由

「借りている家だから、大がかりなことはできない」。その気持ちは分かります。市販の防災グッズ(避難リュック等)を買ったから安心、と思っている方もいるかもしれません。でも、市販の防災グッズには家具固定用の器具は入っていないことが多いのが実情です。家具固定は、家庭ごとに”自分でやる”ものです。

思い出してほしいことがあります。地震でけがをするのは、そこに住む家族です。 持ち家か賃貸かは、家具が倒れてくるかどうかに関係ありません。

そして、家具によるけがは、めったにない話ではありません。

東京消防庁は、こう説明しています。

近年発生した大きな地震によるけが人のうち、約3割から5割の人が家具類の転倒・落下・移動が原因でケガをしています。

(出典:東京消防庁「地震に備える〜家具類の転倒・落下・移動防止対策〜」

けがをした人の、3割から5割。 地震のけがの、半分近くが家具由来ということです。

けがをすれば、その度合いによっては逃げられません。深刻なけがであれば、子どもを抱えて避難することも、その後の生活を立て直すことも難しくなります。

災害医療の研修で、教わったことがあります。「医療従事者がけがをしたら、誰が傷病者を助けるのか」。助ける側が倒れてしまえば、助けられる人が減る。だから、支える側こそ、自分の身を守らなければならない、という考え方です。

これは、親にもそのまま当てはまります。親がけがをすれば、子どもを守る人がいなくなる。 自分が無事でいることが、そのまま子どもを守ることになります。動ける状態で生き残ることが、家族を守る最初の条件です。

被災地で、何度も聞いた言葉

災害の支援に関わるなかで、被災された方から同じ言葉を何度も聞いてきました。

「危ないとは思っていた。でも、後回しにしていた」

「あの部屋、片づけようって言ってたんだよ」

気づいていなかった人は、ほとんどいません。気づいていて、動く前にその日が来てしまった。これが、家具による被害のいちばん多い形です。

だからこの記事は、「危ないですよ」と伝えるためのものではありません。すでに気づいているあなたが、今日動けるようにするためのものです。


結論:穴を開けない固定は「2つ組み合わせる」

先に結論をお伝えします。

賃貸で家具を固定するなら、「突っ張り棒」と「ストッパー」を組み合わせてください。 どちらも壁に穴を開けず、工具も要りません。

東京消防庁も、はっきりこう述べています。

ストッパー式器具(もしくは粘着マット式)とポール式器具を2つ組み合わせることで、一番効果の高いL型金具と同等の効果を発揮します。

(出典:東京消防庁「自宅の家具転対策」

「L型金具」とは、壁にネジで直接留める、いちばん強力な固定方法です。穴を開けないやり方でも、2つ組み合わせれば、それと同等になる。公的機関がそう言っているわけです。

【公的な実験データ】単独では、すべて倒れた

「本当に効くの?」と思われるかもしれません。そこで、実験データを紹介します。

東京都生活文化局が、震度6強相当(兵庫県南部地震の地震波)で、タンス(約81kg)と食器棚(約100kg)を揺らすテストを行いました。結果はこうです。

1つだけ使った場合

  • 粘着マット式だけ → 転倒、または転倒に近い移動
  • ストッパーだけ → 転倒
  • 突っ張り棒(ポール式)だけ → 転倒

2つを組み合わせた場合

  • ストッパー+突っ張り棒を上下に併用 → 転倒せず。移動は10cm以下

(出典:東京都生活文化局 商品テスト結果「家具転倒防止器具の性能」

単独では、どれも倒れました。組み合わせたら、倒れませんでした。

ここが、いちばん大事なところです。「突っ張り棒を入れたから安心」「マットを敷いたから大丈夫」。これは、震度6強相当の実験では通用しませんでした。必ず2つ以上を組み合わせてください。


その前に:賃貸でよくある3つの疑問に答えます

具体的なやり方に入る前に、SNSやQ&Aサイトでよく見かける疑問に、先にまとめて答えます。「調べたけど結局どうすれば」と足踏みしてきた方は、まずここを読んでください。

Q1. 「突っ張り棒って、結局意味ないんじゃない?」

半分正解で、半分間違いです。単独で使うと、震度6強相当の揺れの実験では倒れやすいという結果が出ています(先ほどの東京都生活文化局の実験どおり)。この事実だけで「意味ない」と言われてしまうことがあります。

ただし、ストッパーや粘着マットと組み合わせれば、L型金具と同等の効果を発揮するというのが、東京消防庁の見解です(前掲)。「意味がない」のではなく、「単独では意味が小さい」が正確です。2つ組み合わせれば、突っ張り棒は十分に役に立ちます。

Q2. 「賃貸だから、そもそもネジで留めるL型金具は使えないんですよね?」

「絶対に無理」ではありません。まず、大家さん(または管理会社)の事前承諾があれば、L型金具でしっかり固定するのも選択肢です。地震対策は、大家さんにとっても建物や設備を守ることにつながる、という説明の仕方で承諾が得やすい、という指摘もあります。

じつは、この「原状回復義務が家具固定の障壁になっている」という問題は、学術的にも確認されています。

賃借人要因が背の高い家具の家具転対策を阻んでいることを明らかにした。(中略)公営物件では、原状回復義務免除により対策が促進されている。

(出典:安藤ゆかり・紅谷昇平「賃借人の原状回復義務が「家具転対策」に与える影響:防災士への質問紙調査より」『災害情報』第23巻第1号、2025年、兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科)

つまり、「賃貸だから固定できない」と諦めている人が多いのは、個人の思い込みではなく、原状回復義務という制度上の構造的な問題ということです。裏を返せば、大家さんに正面から相談すれば、承諾が得られるケースは十分あります。

さらに知っておきたいのは、地震で生じた損傷は、原則として借主の原状回復義務の対象外という点です。民法第606条は、賃貸物の修繕は原則として貸主(大家)の義務としています。地震による壁のひび割れ・ガラスの破損などは天災(不可抗力)扱いとされ、退去時に借主が直す必要はないのが原則です。ただし、実際の判断は個別の事案により異なる場合があります。被災時は必ず写真を撮って記録し、速やかに管理会社や大家へ報告するのがコツです。

とはいえ、多くの方は「大家さんに交渉するのは気が重い」でしょう。だからこそ、この記事ではまず穴を開けない方法を先に紹介します。承諾なしで、今日から始められます。

Q3. 「100均の突っ張り棒でも、あれば無いよりマシですよね?」

「家具転倒防止用」と明記された100均商品なら、選択肢に入ります。たとえばダイソーの「家具転倒防止突っ張り棒」は取り付け寸法約50〜75cm、耐圧の目安として約200kgと表示されている商品があります(2026年時点)。「震度7対応」と表記されているアイテムもあります。天井高と家具高の差が合えば、主役として使える選択肢は増えてきています。

ただし、次の3つに注意してください。

  • 同じ「突っ張り棒」でも、家具転倒防止用として設計された耐震ポール(先端に耐震パッドが付き、面で天井を押す設計)と、収納や仕切り用途の一般的な突っ張り棒とは、想定されている用途と形が違う
  • 必ず「家具転倒防止用」と明記された商品を選ぶ(収納用の伸縮棒を代用しない)
  • 商品によっては取り付け寸法(50〜75cm等)が固定なので、天井高と家具高の差に合うかを事前確認する

100均のグッズがもう1つ役立つ場面は、滑り止めシートの追加など「補助」の用途です。「家具転倒防止用」の表示さえ確認できれば、100均でもホームセンター製(1,500円台〜)でも、命を守る道具として使えます。表示の確認は数秒で終わります

わが家では100均商品を実際に使った経験がないため、この記事の設置手順やおすすめは、ホームセンター等の市販品(1,500円台〜)に基づいています


穴を開けない固定グッズの種類と選び方

ここから、具体的にどれをどう選ぶか、整理していきます。

器具の種類くらべ(単独では倒れる。必ず2つ組み合わせる前提)

器具役割賃貸で使えるか単独の強さ目安価格(2026年時点)
突っ張り棒(ポール式)上から押さえる△(単独では倒れやすい)1,500円台〜
ストッパー式家具を壁側に傾ける◎(家具の下に敷く/挟むだけ)△(単独では倒れやすい)900円台〜
粘着マット・ジェル滑り・ズレを抑える◯(家具と設置面の間に挟む)700円台〜
転倒防止ベルト家具と壁・台をつなぐ△(壁は要相談/台ならOK)700円台〜
家具連結金具上下2段の家具をつなぐ○(家具同士のみ)上下の”ズレ”に有効700円台〜
家具と壁のパッド式家具の上部と壁のすき間を埋めて、前に倒れる動きを止める◯(賃貸OKの粘着タイプ)わが家で使用中(実感ベース)※1,500円台〜
L型金具(参考)壁にネジ固定△(要承諾)500円台〜

※「家具と壁のパッド式」は、家具の上部と壁のすき間にT字型のパーツを挟み込み、粘着シートで両側に固定するタイプ。この記事の前半で紹介した東京都生活文化局の商品テストは粘着マット式・ストッパー式・ポール式の3種類が対象で、このパッド式は含まれていません。突っ張り棒が届かない低い家具や、脚があって敷くタイプのストッパーが使えない家具の選択肢として、わが家でも使用中です。

結論:賃貸なら「突っ張り棒+ストッパー」が基本。 どちらも穴が要らず、2つ組み合わせればL型金具と同等(前章の実験どおり)。

\この2つを組み合わせれば、L型金具と同等の効果/


まず1家具から。器具は数千円で揃います

ここまでで、「賃貸でも固定できる」「2つ組み合わせる」という結論は伝わったと思います。

あとは、実際に買って付けるだけです。背の高いタンス・本棚・食器棚が1つあるなら、必要なのは突っ張り棒2本とストッパー1組。合わせて2,500円ほどです。工具は要りません。

突っ張り棒はサイズ選びだけ注意してください。天井までの距離(天井の高さ − 家具の高さ)を測って、その長さが伸縮範囲の中間に来るサイズを選びます。たとえば天井2,400mmの部屋に高さ1,800mmの本棚なら、すき間は約60cm。40〜60cm対応のサイズが合います。

下のリンク先は、SSS〜Lの6サイズと2本・4本・10本から選べる商品です。家中まとめて対策するなら10本セット(家具5個分)という選び方もできます。

\この2つを組み合わせれば、L型金具と同等の効果/

選び方と設置手順は、実践編にまとめました

「突っ張り棒はどこに立てるのが正解?」「ストッパーは家具の下のどこに入れる?」「うちのタンスは脚があるけど大丈夫?」

こうした具体的な疑問には、実践編でひとつずつ答えています。わが家で実際にやった設置手順(所要時間20分)を、写真つきで解説しました。

家具転倒防止グッズの選び方と設置手順-賃貸で失敗しない実践ガイド【写真つき】

実践編で扱っているのは、次の内容です。

  • 家具の大きさ別・おすすめの組み合わせ(タンス/低い家具/テレビ/冷蔵庫)
  • 突っ張り棒を立てる位置(手前と奥、どちらが正解か)
  • ストッパーの2タイプの使い分け(差し込む/敷く)
  • 天井を傷めない貼り方
  • わが家がやらかした失敗2つ(注意書きを読まずに壁紙へ直貼り/付けただけで効いていなかったテレビのベルト)
  • 賃貸でやりがちな失敗6つ

完璧でなくて構いません。タンス1つ、突っ張り棒1組からでも、始めた人と始めなかった人では、その日が来たときに大きく変わります。


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さらに、季節ごとに”点検日”を持ちたい方へ

家具固定は「1回やって終わり」ではありません。突っ張り棒は緩み、家具は掃除のたびに動きます。年2回、3月11日と9月1日(防災の日)を”点検日”にしておくと忘れません。

点検日にやることは、別の記事にまとめました。家具の固定・備蓄の期限・子どものサイズ・ハザードマップ・停電の備え。5つで1時間かかりません。

防災の日にやる、わが家の点検リスト-9月1日に見直す5項目


最終更新日:2026年8月22日

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